日本の建設業界ではデジタルトランスフォーメーションが加速しており、Building Information Modeling(BIM) は、は官民を問わず、さまざまなプロジェクトでますます重要な要素となっています。政府も、生産性の向上や人手不足への対応、インフラ管理の高度化を目的とした包括的な戦略の一環として、BIM/CIMの導入を積極的に推進してきました。
こうした背景から、多くの企業が共通して抱いているのが「BIMの義務化はいつから始まるのか」という疑問です。今後の導入スケジュールと、それが業界に与える影響を正しく理解することは、デジタル建設の時代に備える建設会社、設計事務所、施工会社にとって極めて重要です。
本記事では、日本におけるBIM導入のロードマップを整理し、その動きが建設業界で事業を展開する企業にとって何を意味するのかを詳しく解説します。

近年、日本の建設業界では「BIM義務化」という言葉が広く使われるようになっています。
しかし、実際の状況はこの表現から受ける印象とはやや異なります。現時点では、BIMは法律によって正式に義務化されているわけではありません。日本政府は「原則適用」という方針のもと、BIMの活用を段階的に推進しています。
2020年4月、国土交通省は、小規模な案件を除き、2023年度までにすべての公共工事にBIM/CIMを原則適用する方針を公表しました。この動きは業界内で「BIM義務化」と呼ばれることが多いものの、厳密には法的な義務というより、政策主導による実質的な要請と捉えるのが適切です。
この枠組みのもとでは、公共工事の発注者が各プロジェクトの特性に応じてBIM/CIM活用の目的を定め、受注者はその目的に沿った3次元モデルを作成・活用することが求められます。
ただし、この方針はすべての案件に一律に適用されるわけではありません。小規模工事や災害復旧工事のような緊急性の高い案件については、BIM導入による費用対効果が限定的である場合が多いため、一般的には対象外とされています。
BIM義務化 いつから本格的に進められているのかを理解するうえで重要な考え方
BIM/CIMの原則適用とは、公共事業における設計・施工プロセスの中で、3次元モデルを活用する取り組みを指します。この仕組みにおいては、発注者がBIM/CIM活用の目的を定め、それに基づいて受注者が3次元モデルを作成し、活用することが求められます。
こうした活用目的は、一般的に「必須項目」と「推奨項目」の2つに分類されます。必須項目は主に可視化による効果に重点を置いており、3次元モデルを用いて関係者間の意思疎通や事業内容への理解を向上させることを目的としています。受注者は、発注者が示した目的に沿って3次元モデルを作成し、活用しなければなりません。
一方、推奨項目には、シミュレーション、解析、自動化、省力化など、より高度なBIM/CIMの活用が含まれます。これらは、企業が単なる可視化にとどまらず、BIM活用能力をさらに拡大していくことを促すものです。
現時点では、正式な設計図書として扱われるのは依然として2次元図面であり、3次元モデルは補足的な参考資料という位置づけです。しかし、政府は今後、プロジェクト業務における3次元モデルの役割を段階的に拡大し、その重要性をさらに高めていくことを長期的な目標としています。
日本では、建設分野におけるデジタル化の取り組みは、一般的にBIM/CIMと呼ばれています。これは、Building Information Modeling(BIM)とConstruction Information Modeling(CIM)を統合した枠組みです。
BIMは主に建築プロジェクトに適用される一方、CIMは道路、橋梁、トンネル、鉄道といった土木インフラ事業を対象としています。日本では、この2つの概念を組み合わせることで、建築分野とインフラ分野の双方において、3次元デジタルモデルの活用を推進しています。
BIM/CIMを活用することで、3次元モデルは企画・設計・施工・維持管理といった、プロジェクトのライフサイクル全体にわたって利用できるようになります。このアプローチにより、プロジェクトの可視化が進むだけでなく、関係者間の連携強化や設計ミスの低減、さらには効率的なプロジェクトマネジメントの実現が期待されています。
今後、日本の建設業界においてデジタル化がさらに進展する中で、BIM/CIMは生産性の向上や人手不足への対応、そして将来的なインフラ管理の効率化を支える重要な基盤として、ますますその役割を高めていくと見込まれています。
BIM義務化 いつからという流れの背景にある要因
日本の建設業界が直面している最大の課題の一つが、深刻な技能労働者不足です。建設分野では労働力の高齢化が急速に進んでおり、多くの熟練した技術者や作業員が引退時期を迎える一方で、若い世代の入職者は減少しています。こうした労働力の縮小が進む中でも生産性を維持するためには、企業はより効率的で自動化された業務フローを構築する必要があります。BIMは、3次元ベースの設計、チーム間の連携強化、反復作業の自動化を可能にすることで、この課題への対応を支援し、限られた人員でもより効率的にプロジェクトを進められる環境づくりに貢献します。
BIMの導入は、日本の建設分野における国家的なデジタルトランスフォーメーション戦略によっても強く後押しされています。特に、その中心となっているのが、政府主導の「i-Construction」施策です。これは国土交通省によって打ち出された取り組みであり、BIM/CIM、3次元測量、自動化施工機械などのデジタル技術の活用を推進し、プロジェクトライフサイクル全体にわたる生産性向上を目指しています。この枠組みの中で、BIM/CIMは設計、施工、維持管理に関するデータをつなぐ中核的なデジタルプラットフォームとして機能し、関係者間の連携強化、ミスの削減、そしてプロジェクト全体の効率向上に寄与します。
日本では、高度経済成長期に整備された橋梁、トンネル、道路、公共施設など、多くのインフラが老朽化しており、その維持管理がますます大きな課題となっています。これらの構造物の老朽化が進む中で、効率的な維持管理とアセットマネジメントの重要性は一段と高まっています。
BIMやデジタルツインをはじめとする関連技術を活用することで、インフラ資産をライフサイクル全体にわたる有用な情報を保持した詳細なデジタルモデルとして表現することが可能になります。これにより、インフラ管理者は資産の状態をより的確に把握し、保守計画をより効果的に立案するとともに、長期的な維持管理戦略の最適化を図ることができます。
日本では、BIMおよびBIM/CIMの導入は、段階的かつ計画的なロードマップに基づいて進められてきました。政府は、BIMを直ちに法的義務とするのではなく、公共インフラ事業や建築分野において、その活用範囲を段階的に拡大する方針を採っています。
今後のBIM導入の進展を見通すうえでは、いくつかの重要な節目を押さえておくことが重要です。
2020年4月、国土交通省は、公共事業におけるBIM/CIMの活用を推進するための重要な方針を公表しました。政府は、2023年度までに、小規模な案件を除くすべての公共インフラ事業に対して、BIM/CIMを原則適用することを決定しました。
当初、導入目標年度は2025年度とされていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大下において建設業界のデジタル化が急速に進展したことを受け、そのスケジュールは2年前倒しされました。この決定は、日本における建設分野のデジタルトランスフォーメーションを加速させるうえで、重要な転換点となりました。
2023年度より、国土交通省直轄の土木事業において、BIM/CIMの原則適用が正式に開始されました。この方針は主に、公共インフラ事業における詳細設計段階および施工段階に適用されます。
この枠組みのもとでは、発注者がBIM/CIM活用の目的を定め、それに基づいて受注者が3次元モデルを作成し、活用します。活用目的は必須項目と推奨項目に分類されており、各プロジェクトの特性に応じて柔軟に運用できる仕組みとなっています。
導入初期の段階では、必須項目は主に3次元モデルによる可視化に重点が置かれており、中小企業を含む多くの受注者にとっても、BIM活用の業務フローを取り入れやすい内容となっています
2025年度以降、BIMの活用は、土木インフラ分野にとどまらず、建築分野へもさらに拡大していくことが見込まれています。政府は、設計照査、監督・検査の手続へのBIMの組み込みや、建設プロジェクトにおけるBIMデータ納品の推進を進めています。
また、中小企業によるBIM技術の導入を支援するために、建築BIM加速化事業のような施策も実施されています。今後、BIM活用の中心は、単なるモデル作成から、より高度なデータ活用や、プロジェクト関係者間の連携へと段階的に移行していくと考えられます。
建築確認手続のデジタル化の一環として、日本政府は2026年春頃にBIM図面審査を導入する予定です。
この制度のもとでは、BIMソフトウェアで作成したモデルから出力された図面を用いて、建築確認申請を行うことが可能になります。この段階では、BIMデータそのものは主として参考情報として扱われ、正式な審査は引き続き、モデルから作成された図面を中心に行われる見込みです。
日本では、2029年春までに、建築確認制度の一環としてBIMデータ審査(BIMデータ審査)が導入される予定です。この段階では、BIMから出力された図面だけでなく、IFCモデルなどの標準化されたBIMデータそのものが、審査の主たる対象となります。
この仕組みにおいては、BIMモデルから必要な情報を自動的に抽出・表示することで、確認審査業務の効率化と判断の一貫性向上が期待されています。この移行は、モデルベースの法適合確認への重要な一歩であるとともに、日本の建設業界におけるより広範なデジタルトランスフォーメーションを推進するものでもあります。
日本においてBIMおよびBIM/CIMに関する政策が引き続き拡大する中、建設会社では、プロジェクトの計画、設計、遂行のあり方に大きな変化が生じ始めています。デジタル施工への移行は、単にプロジェクト上の要求事項に影響を与えるだけでなく、業界全体における人材に求められる能力、協働の方法、さらには投資の優先順位そのものをも変えつつあります。
最も直接的な影響の一つとして挙げられるのが、BIMに関するスキルや人材への需要の高まりです。BIM導入が進むにつれて、企業ではプロジェクトのライフサイクル全体を通じて、3次元モデルの作成・管理・活用を担うBIMエンジニアやモデラー、コーディネーターの重要性が一層高まっています。さらに、単なるモデリングの技術力にとどまらず、BIMのワークフローやデータ管理、分野をまたいだ調整に関する理解も不可欠です。こうした背景から、多くの企業が競争力を維持・強化するために、BIM研修の実施や社内の体制整備への投資を進めています。
BIMに関する政策は、建設プロジェクトにおける技術的要件にも変化をもたらしています。現在、多くの公共インフラ案件の入札では、施工会社や設計会社に対し、3次元モデルおよびBIMベースの業務フローに対応できる能力が求められるようになっています。これには、可視化モデルの作成、デジタルモデルを用いた設計調整、さらにプロジェクト成果物の一部としてのBIMデータ納品が含まれます。こうした要件に対応できない企業は、一部の公共案件への参画が今後ますます難しくなる可能性があります。
BIMの導入は、プロジェクト関係者間におけるデジタル連携への期待も高めています。BIMモデルは、一般的にCDE(共通データ環境)、クラウドプラットフォーム、デジタル型のプロジェクト管理システムを通じて共有・管理されます。これらのツールにより、リアルタイムでの情報共有、異なる専門分野間の調整の円滑化、そしてプロジェクトライフサイクル全体を通じた透明性の向上が可能になります。その結果、企業には、より統合的でデータ活用を前提としたプロジェクト遂行体制への適応が求められています。
BIMの導入は多くの利点をもたらす一方で、特に中小企業にとっては課題も生じさせます。BIMを導入するためには、ソフトウェアやハードウェアへの投資に加え、従業員教育や業務フローの見直しも必要となります。経営資源が限られている企業にとって、こうした変化に短期間で対応することは容易ではありません。しかし、公共事業においてBIMの活用がより広く進むにつれて、多くの中小企業も、業界の要請に対応するために、徐々にBIM技術を導入したり、外部のBIMサービス提供会社と連携したりするようになっています。
要するに、日本のBIM政策は建設業界を段階的に変革しつつあります。BIM/CIMが公共事業や各種審査・規制手続においてより広く適用されるようになる中で、建設会社には、BIM対応力の強化、デジタルワークフローの導入、そして関係者間の連携強化を通じて適応していくことが求められます。早い段階から準備を進めた企業ほど、日本における建設業のデジタル化が進む環境の中で、より有利な立場で競争できるようになるでしょう。
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